DRAFT INC.

CASE / 2026.10.31

アートエンブの伴走支援と見積もり工場の制作

株式会社アートエンブから、伴走支援と見積もり工場の制作をご依頼いただきました。アートエンブは福井県あわら市で刺繍ワッペンを作っている会社で、従業員は38名です。

見積もり工場は、デザイン画像とサイズを渡すと、AIが原価と単価を計算して見積書のExcelまで作る仕組みです。2026年6月に始めて、約4か月で動くようになりました。口村社長は、それまでAIを仕事に使ったことがありませんでした。

ご依頼やったこといまの状態
伴走支援
月4回
口村社長の実務をAIに渡せる形に整える。判断の基準を言葉にしてルールにする。迷ったときの相談に乗る業務ルール11本、手順書9本、決定の記録 約120本が文字で残っている
見積もり工場の制作口村社長の計算式と目分量をAIに教え、過去のデータから原価と単価を出せるようにする画像とサイズを渡すと見積書のExcelまでできる。引き継いだ140品番は毎晩19時に計算し直す

困っていたこと

ワッペンの値段は、ほぼ針数で決まります。針数は刺繍の縫い目の数で、デザインを刺繍機のデータにしてみないと正確には分かりません。そのため見積もりの時点では目分量で出していて、その目分量は口村社長と事務担当の2人しか分かりませんでした。

塗りつぶしの多い柄ほど針数を少なく見てしまい、作ってから原価割れに気づくことがありました。あとで比べると、塗りの多い柄やフェルト地では、実際の針数が目分量の約2.5倍ありました。

パソコンの画面に映したワッペンのデザインをもとに、担当者が刺繍のデータを作っている様子
刺繍データを作っているところです。

過去の単価も、すぐには探せませんでした。見積書は約2万ファイル、販売履歴は約11万行あり、置き場所も別々で、人が記憶を頼りに探していました。

伴走支援でしたこと

正直、AIは何から手をつけてよいか分からない状態でした。プログラムも書けません。やったことは、自分の頭の中にある判断を、普段の言葉でAIに説明しただけです。

口村社長

伴走支援は月に4回行いました。最初に、いちばん困っていた見積もりから手をつけると決めました。あわせて、先に数字を測ること、小さく始めること、口村社長一人で使うAIにしないことも決めました。

口村社長が「十円玉の大きさで約1,000針」という目分量をそのまま伝えると、AIが数式にしました。判断に迷ったところは伴走の時間に一緒に考え、決まった基準はその場でルールに書いて、決めた経緯は別の記録に残しました。

AIを使うこと自体より、何をAIに渡して何を自分が持つかを決めるのが難しかった。月に4回、見積もりの判断で迷ったところを一緒に考えてもらえたのが大きかったです。社長一人のAIにしない、という方針もそこで決まりました。

口村社長

見積もり工場でできること

流れは下の図のとおりです。探しにいく刺繍データ8,554件には、実際の針数と寸法が入っています。

01 人デザイン画像とサイズを渡す02 AI過去の刺繍データ8,554件から探す見つかれば、実際の針数無ければ、塗り面積で計算03 AI原価を計算し、最低ラインを置く04 AI別のAIが独立に検算し、見積書のExcelを作る05 人口村社長が値を見て、決める06決めた値との差を、台帳に残す差は、次の見積もりの計算に戻ります01 人デザイン画像とサイズを渡す02 AI過去の刺繍データ8,554件から探す見つかれば、実際の針数無ければ、塗り面積で計算03 AI原価を計算し、最低ラインを置く04 AI別のAIが独立に検算し、見積書のExcelを作る05 人口村社長が値を見て、決める06差を台帳に残す差は、次の見積もりの計算に戻ります

値を最後に決めるのは口村社長です。7月から、AIが出した値と口村社長が決めた値を台帳で比べ、差が出るたびにルールを直してきました。8月には、原価を下回る単価が出ないようにしました。

引き継いだ140品番の見積もり

8月に、引き継いだ学校ワッペン140品番の見積もりを見積もり工場で出しました。何日もかかる見込みでしたが、1日で全品番の見積もりができました。別のAIの検算は140件すべて一致し、計算と転記の検査も140件すべて合格しました。原価割れは0件です。この140品番は、9月から毎晩19時に計算し直しています。

ART EMB SINCE 1973 と刺繍された、青と白の丸いワッペン2枚を木の机に置いた写真
アートエンブのワッペンです。

見積もり以外に作ったもの

同じやり方で、次のものも作りました。

  • 過去の見積もり約2万件と販売履歴約11万行を、品名や社名で検索できる社内アプリ
  • お客様が記入する見積依頼フォーム、入稿シート、発注シート。記入した内容がそのまま見積もりに入ります
  • 注文書のスキャンから製造指示書を下書きする仕組み。初回は27件でした
  • 試算表の画像PDFを読み取って、売上、売掛、買掛を1画面で見られるダッシュボード

社長がいなくても動くように

見積もり工場の一式はGitHubに置き、口村社長のパソコン、事務担当のMac、会社のiMacの3台で自動的に同じ内容にそろえています。毎晩の計算は、会社にあった古いiMacをつけたままにして動かしています。

10月に見積もりのルールを業務ルールとしてまとめ、社員のAIにも同じルールが届くようにしました。見積もり工場は、口村社長が自分で動かせる状態になっています。

変わったこと

口村社長の見積もりの仕事は、計算することから、出てきた値を見て決めることに変わりました。製造指示書の下書きや資料作りは、頼めばAIが作ります。AIが作った社内資料と帳票は約70件あります。月次の売上や利益も、自分で読めるようになりました。

一番変わったのは、見積もりの根拠を言えるようになったことです。以前は経験で値段を出していて、塗りの多い柄を安く見積もって赤字になることがありました。今は過去の刺繍データ8,554件から実際の針数を引いて、原価を下回る単価は出ません。取引先との価格の話も、数字を持って行けるようになりました。

口村社長
これまでいま
見積もりの基準は、口村社長と事務担当の2人しか分からない計算式とルールが文字で残り、社員のAIにも届く
針数は目分量過去の刺繍データから実際の針数を引く。無ければ画像から計算する
作ってから原価割れに気づく原価を下回る単価は出ない。別のAIが独立して検算する
過去の単価は、人が記憶で探す社内の誰でも品名で検索できる
140品番の見積もりは何日もかかる見込み1日で全品番。以後は毎晩19時に計算し直す
見積依頼は情報がそろわず、聞き直すフォームの内容がそのまま見積もりに入る
製造指示書は、事務担当が注文書を見て手で打つ注文書のスキャンからAIが下書きし、人が確認する
売上、売掛、買掛は月次の試算表を待つ試算表の画像PDFを読み取り、1画面で見る

あなたの会社なら

アートエンブではあなたの会社なら
口村社長の見積もりの目分量を、数式にしたベテランの「だいたいこのくらい」を、数式にできます
過去の刺繍データ8,554件を、AIが探す過去の図面や見積もり、日報を、AIが探せます
原価を下回る見積もりを、出ないようにした赤字の受注を止められます

最初から全部を変えようとしないことです。私は一番困っていた見積もりだけに絞って、自分の判断を言葉にするところから始めました。それが動き始めたら、隣の仕事に同じやり方を広げる。その繰り返しでした。

口村社長

会社の概要

社名株式会社アートエンブ
所在地福井県あわら市
創業1973年(白峰刺繍として)
従業員38名
事業刺繍ワッペンとオーバーロック加工の一貫生産
設備刺繍機20台
年間の生産と加工約390万枚(うち刺繍 約140万枚)
デザインの実績8,500種以上
取引社数170社以上

数字は、株式会社アートエンブの社内の記録から取りました(2026年10月時点)。写真は同社の提供です。

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