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CEO BLOG / 2026.10.29

Google親会社のアルファベットの売上は25%伸びたのに、利益が予想を下回った理由

何が起きたのか

Googleの親会社のアルファベットが、10月28日に7〜9月期の決算を発表しました。売上は1年前より25%多い1,276億ドルです。2桁の伸びは、これで13四半期続いています。(この規模でほんとすごい)

それでも株価は、発表のあとの時間外取引で約1割下がりました。ニュースでは「売上も利益も市場予想を下回った」と伝えられています。

結論から言うと、売上はほぼ予想どおりで、大きく予想と外れたのは利益です。利益の外れの6割ほどは、持っている株が値下がりしたことによる帳簿上の損失でした。ただ、それを除いても予想には届いていません。残りの原因は、AIが売上と費用の両方で絡んでいます。順番に見ていきます。

予想と実際の数字

項目実際市場予想差
売上1,276億ドル1,282億ドル−0.5%
1株あたり利益(EPS)2.12ドル3.02ドル−30%
営業利益(本業の利益)406億ドル432億ドル−6%
検索広告の売上634億ドル650億ドル−2.5%
YouTube広告の売上112億ドル114億ドル−2%
クラウドの売上307億ドル292億ドル+5%

市場予想は、報道各社が伝えたアナリストの予想の平均です。

利益を押し下げたのは、持っている株の評価損

アルファベットは、ほかの会社の株を多く持っています。持っている株は、四半期ごとに時価で評価し直します。売っていなくても、値上がりした分は利益に、値下がりした分は損失に入ります。実際にはお金は動いていないので、帳簿の上だけの増減です。

7〜9月期は、この評価で87億ドルの損失が出ました。この損失はSpaceXの株によるものだと言われています。税金の分を差し引くと、純利益が67億ドル減り、1株あたり利益は0.55ドル下がりました。

期間株の評価損益1株あたり利益
2025年7〜9月期+107億ドル2.87ドル
2026年4〜6月期+990億ドル9.11ドル
2026年7〜9月期−87億ドル2.12ドル

純利益は1年前より25%減りましたが、主な理由はこの差です。1年前は株の値上がりで利益が膨らみ、今回は値下がりで減りました。

株の評価損を除いても、予想には届いていない

株の評価損の分を除くと、1株あたり利益は2.67ドルです。それでも予想の3.02ドルより1割ほど少なくなります。本業の営業利益も406億ドルで、予想の432億ドルに届きませんでした。

決算書と決算説明会の話を合わせて読むと、ここにAIが4か所で効いています。先にまとめると、次のとおりです。

どこにAIの効き方7〜9月期の数字
検索広告検索の回数は増えたが、AIモードは広告の稼ぎがまだ少ない伸びが17%から12%へ
費用AIの人材、TPUの機器、サーバーの減価償却、AIモデルの開発研究開発費が36%増
クラウドAIを動かす設備とサービスの需要で売上が2倍売上が103%増
設備投資AI用のサーバーとデータセンター514億ドル(1年前の2倍超)

AIで検索は増えたが、広告の稼ぎはまだ追いついていない

Googleの検索には、AIが答えをまとめて出す機能が2つあります。検索結果の上に要約を出す「AIによる概要」と、AIと会話するように質問できる「AIモード」です。

スンダー・ピチャイCEOは、こうしたAIの機能で検索の利用が増えたと話しています。検索される回数の伸びは「この5年でいちばん高い」そうです。商品を探すような、広告につながりやすい検索も増えています。

それでも、検索広告の売上の伸びは4〜6月期の17%から12%に下がりました。YouTube広告も13%から9%に下がっています。

売上の伸び(1年前と比べて)4〜6月期7〜9月期
検索広告17%12%
YouTube広告13%9%
クラウド82%103%

広告の責任者は、検索広告の伸びが鈍った理由をいくつか挙げています。いちばん大きいのは為替でした。サッカーのワールドカップで4〜6月期に広告が集まった反動もあります。EUが少額の輸入品の関税の免除をやめ、アジアの一部の小売りの広告主が影響を受けたことも挙げています。

AIもその1つです。AIモードの検索は急に増えていますが、いまは従来の検索より広告で稼げる額が少ないそうです。AIモードの検索が増えた分、検索広告の伸びを押し下げたと説明しています。

会社は、AIモードの検索の多くはもともと無かった新しい検索だと見ています。広告の機会は、時間をかけて増えるという考えです。AIによる概要とAIモードの広告を、いま広げているところです。

「AIによる概要」で、広告のクリックは減ったのか

「AIによる概要」が出ると、検索した人がその場で答えを読んで終わり、サイトを訪れる人が減ると言われています。調査によって数字は違いますが、サイトへのクリックは4割から7割ほど減っています。

日本でも、Ahrefsの調べでは、検索1位のクリック率が、概要が無かった場合の見込みより62.7%低くなっています(2026年6月)。「SEOは終わった」と言っても過言ではないです。

では、広告のクリックも同じように減っているのでしょうか。Googleの数字を見ると、減っていません。検索広告が押された回数は、1年前と比べて2025年7〜9月期に7%、2026年4〜6月期に13%増えています。

インドとアメリカの大学の研究者が2026年に行った実験も、同じ結果でした。アメリカのパソコンの利用者約1,000人を分け、概要を見せる人と隠す人で比べています。概要を見せた人は、サイトへのクリックが約4割減りましたが、広告のクリックは変わりませんでした。

概要の影響を測った調査の多くは、調べものの検索を対象にしています。広告が多く出るのは、商品を探すような買う前の検索です。概要で答えが済んで減っているのは、主にサイトへの訪問です。広告への影響がはっきり出ているのは、ここまでに書いたAIモードの方です。

AIの費用が、利益を押し下げている

費用の面では、AIにかかるお金が増えています。財務責任者(CFO)の説明では、研究開発費は36%増えました。主な理由は、AIの人材への投資とサーバーの減価償却です。

減価償却は、サーバーやデータセンターの代金を、買った年にまとめてではなく何年かに分けて費用にするものです。設備投資を増やすほど、この費用は次の年以降も積み上がります。「インフラへの投資の大幅な増加は、今後も損益の重しになる」と話しています。

ほかの費用も増えています。パートナーへの支払いを除いた売上原価は351億ドルで、32%増えました。主な理由は、TPU(AI用のチップ)を使ったシステムを売るための機器の費用です。販売とマーケティングの費用も、Geminiへの投資と人件費で22%増えています。

さらに、自社の計算設備が足りないため、7〜9月期の終わりから他社の計算設備も借り始めました。これも当面の利益を押し下げると話しています。

AIの需要で、クラウドは2倍に

一方で、AIで売上が大きく伸びているのがクラウドです。クラウドの売上は1年前の2倍の307億ドルになりました。企業がAIを動かすための設備と、企業向けのAIのサービスが伸びています。Googleが自社で作っているTPU(AI用のチップ)を使ったシステムの販売も、売上の伸びに貢献したと書かれています。

クラウドの利益は、1年前の36億ドルから111億ドルと3倍になりました。売上に占めるクラウドの割合も、1年前の15%から24%に上がっています。

この先の売上も積み上がっています。クラウドの受注残(契約は済んでいて、まだ売上になっていない分)は5,610億ドルです。その55%あまりが、2年以内に売上になる見込みです。

AIの使われ方も伸びています。企業がAPIで使うGoogleのAIモデルの処理量は、1分あたり約320億トークンで、1年前の4倍を超えました。対話型AIのGeminiのアプリは、利用者が10億人に達しています。

稼いだお金より多く、AIの設備に使っている

7〜9月期の設備投資は514億ドルで、1年前の2倍を超えました。約65%がサーバーとネットワークの機器で、残りの35%がデータセンターです。本業で入ってきたお金(営業キャッシュフロー)は423億ドルなので、入ってきた額より91億ドル多く使ったことになります。

営業キャッシュフローは、TPUのシステムを売るための在庫の積み上げでも減りました。EUの制裁金の支払い(52億ドル)もありました。手元に残るお金(フリーキャッシュフロー)は、4〜6月期に続いてマイナスです。

2026年の設備投資は、1年で1,950億〜2,050億ドルの見込みです。2027年は、これをさらに大きく増やすと言っています。具体的な額は、次の10〜12月期の決算で示すそうです。

お金は、外からも集めています。7〜9月期には、社債で287億ドルを借り、新しい株を出して124億ドルを集めました。6月には、AIへの投資のために約800億ドル分の株を新しく出す計画も発表しています。その一方で、自社株買いは今年に入ってから止まっています。去年は1〜9月の間に、約400億ドル分の自社株を買い戻していました。

アルファベットはこれまで、広告で稼いだお金で自社株を買い戻してきた会社でした。いまは新しい株を出し、借りたお金も足して、AIの設備をつくっています。スンダー・ピチャイCEOは投資について「これは全部、大きく見れば、短期の配分ではなく長期の計画として考えています」と話しています。

今後の見どころ

帳簿の上の損失は、持っている株の値動きしだいで、次の四半期には利益に戻ることもあります。見ておきたいのは、AIに関わる次の2つです。

1つは、AIモードの広告がどこまで稼げるようになるかです。検索の回数は増えているので、それが広告の売上につながるかどうかが、検索広告の伸びを左右します。

もう1つは、AIへの投資が、どれだけ早く売上と利益になって返ってくるかです。クラウドの受注残は増えていますが、減価償却や他社から借りる設備の費用も、しばらく利益を押し下げます。2027年にいくら投資するのかは、次の決算で分かります。

いまアルファベットに問われているのは、AIへの投資を広告の次の稼ぎ頭に育てられるかどうかだと思います。

※本記事は投資を勧めるものではありません。